高齢者の運転に伴うリスク
近年、高齢のドライバーによる悲惨な事故が報道されています。
認知能力が低下した状態で運転したため、高速道路を逆走したり、アクセルとブレーキを踏み間違えてしまったりといったケースが見られているのです。
こうした事態を避けるためには、ドライバー本人が注意を払うことに加えて、子どもや孫など家族のサポートが求められます。
運転に関して明らかに危険な兆候が見られるのであれば、悲しい出来事が起こる前に免許返納制度を活用するよう勧めることも必要でしょう。
高齢者が運転することに伴う大きなリスクは「視覚認知能力の低下」です。
視力が低下するだけでなく、目の周りにある筋肉が衰えることにより視野が狭くなるため、周囲の歩行者や自動車の動きを見落としてしまう可能性が高くなります。
また、動体視力が低下することで、咄嗟の出来事に対して機敏に反応することが難しくなるのです。
注意喚起の標識を見落とすリスクも高くなるでしょう。
こうしたさまざまなリスクを考慮した結果、家族と話し合ったうえで免許返納制度を利用することに決めたという高齢者は少なくありません。
免許返納制度のメリット
免許返納制度の正式名称は「運転免許の申請取り消し」で、近隣の警察署もしくは運転免許センターにて手続きを行うことが可能です。
申請にはドライバー本人の運転免許証を持参しましょう。
免許証が見つからない場合は、マイナンバーカードなど他の本人確認書類があれば大丈夫です。
この手続きに関連して費用は一切発生しません。
注意が必要なのは、免許停止などの処分を受けている人です。
事故や違反によって取り消しなどの行政処分を受けている間は、免許返納の手続きができません。
免許返納制度を利用すると、「運転経歴証明書」を申請することができます。
この証明書は公的な身分証として利用することが可能で、更新の必要がありません。
また、この証明書を提示することで、公共交通機関を割引料金もしくは無料で利用できます。
タクシーの料金や美術館などの施設使用料が割引になることもあるため大変便利です。
ただし、運転経歴証明書の申請は返納手続きが完了してから5年以内と定められており、この期限を過ぎてしまうと申請ができません。
また、各種割引の適用範囲や割合は自治体によって異なるので、事前に確認しておくと良いでしょう。
もちろん、公共交通機関があまりないエリアでは、自動車がないと買い物や病院へ行くことが難しくなるということが起こり得ます。
頼れる家族が近くに住んでいないというケースもあるでしょう。
ですから、「一定の年齢になったら免許を返納すべき」と杓子定規に考えるのではなく、個々の状況をよく吟味したうえで判断することが大切です。