水素と酸素で発電する基本の仕組み
燃料電池車(FCV)は、水素と空気中の酸素を化学反応させて電気を生み、その電力でモーターを駆動する構造です。排出されるのは水蒸気だけなので、実質的に排出ガスゼロ。エンジンを使わず走るため、走行中はとても静かです。構造的には、タンクに貯めた水素が燃料電池スタックへ送られ、そこで電気と熱、水が生成されます(走る+熱効率を兼ね備えた仕組みです)。
反応で発生した電力は、そのままモーターへ、またはバッテリーに蓄えられます。モーターによる加速はスムーズで、アクセル操作への反応も軽やか。モーターと電気で動き、エンジンのようなエンジン音がしないので、走行中の静粛性は他タイプのクリーンカーに比べても抜きんでています。
また、電気自動車に似ている印象を持たれがちですが、充電に時間がかかるEVと比べて、水素補給は数分で完了します。普段のガソリン車の感覚に近く、ロングドライブとの相性も良好です。
環境に優しく、静かで効率も良いメリット
FCVが注目されるメリットは大きく三つあります。まず一つ目は「ゼロエミッション」です。走行時にCO₂を出さず、出力されるのは水蒸気だけ。温暖化対策の観点で非常に有効です。二つ目は「静かさ」。エンジン音に悩まされる場面でもストレスなく走れ、住宅街や深夜のドライブにも配慮できます。三つ目は「効率性」。燃料のエネルギーを電気として回収し再利用する回生ブレーキ搭載で、高速と市街地ともに安定した燃費性能を示します。
さらにFCVは、停電時や災害時の「非常用電源」としての使い道もあります。実際、北海道胆振地震時には、FCVが自治体などへの電源供給にも活用されました。エンジンの摩耗が少なく、静かで長寿命という特性もあり、車両の耐久性にもプラスになります。
燃料電池ユニットの進化により、航続距離も伸びてきています。最新モデルでは1回の水素充填で600kmを超える走行も可能で、日常使用に加えて長距離移動も視野に入れられるようになってきました。
普及のポイントとインフラの現状
一方で普及には課題もあります。最大の壁は「水素ステーション」の整備状況。国内では2025年時点で約160軒が稼働中ですが、政府は2030年までに約320カ所を目標としています。現在は都市部(首都圏・中京圏・関西圏・九州圏)集中型整備の段階で、地方ではまだまだ不便な状態です。
FCVの普及状況も進捗は鈍く、2025年までの政府目標は20万台、2030年には約80万台としています。しかし現状の普及台数はそれまでに大幅に下回る見通しです。ここには「需要 VS インフラ」のいわゆる“鶏卵ジレンマ”があり、どちらを先に整備すべきかという課題が存在します。
とはいえ、トヨタやホンダ、日野の大型トラックなどメーカー主導で技術検証・販売が続いているほか、政府も補助金と規制緩和で促進策を推進中。2030年以降は水素製造コスト低減やIoT化したスマート水素ステーションの整備も予定されていて、インフラ環境は徐々に改善される見込みです。
この分野はまだ発展途上ですが、環境への配慮と実用性の両立を目指す動きが続いています。次世代モビリティとしての可能性に、これからも注目しておきたいですね。